EMS(Express Mail Service)は、「国際スピード郵便」の通称であり、万国郵便連合(UPU)に加盟する世界各国の郵政公社が連携して提供する国際郵便サービスである。
海外への発送業務が発生する越境EC事業において、EMSは多く使われる発送方法の一つとなっている。世界120以上の国・地域に郵送可能で、アジア・オセアニアなどの隣国からアメリカ・ヨーロッパ・中近東・中南米・アフリカなどにも対応していることから、世界中への荷物の配送、越境EC需要に応える上で欠かせないサービスだといえる。
EMSの主な特徴とメリット
EMSが越境ECの配送手段として多く活用される理由には、手軽さと配送スピードが挙げられる。越境EC事業者がEMSを活用する主なメリットは、次の通りとなっている。
- 迅速な配送:国際郵便の中でも比較的配送スピードが速いため、顧客満足度向上に期待ができる
- 詳細な追跡サービス:荷物の現在地をリアルタイムで確認できる詳細な追跡サービスが提供されている
- 比較的手頃な料金:DHLやFedExといった国際宅配便サービスと比較して、手頃な料金で利用できるケースが多い
- 多様な国・地域への対応:世界約120ヵ国(地域含む)へ発送できるため、幅広い越境ECビジネスに対応ができる
- 簡易な手続き:郵便局での手続きが可能で、専用の集荷サービスも利用できるため、多忙なEC事業者でも手軽に利用が開始できる
なお、配送手続きは次に挙げられる必要書類を用意すれば、郵便局への持ち込みもしくは集荷依頼で完了する。
- EMSラベル:差出人、お届け先、内容品、重量などを記載する送付状。通関電子データの送信が万国郵便条約で義務化されていることから、ラベルの準備・作成には「国際郵便マイページサービス」の活用が推奨されている
- インボイス(税関告知書):通関手続きに必須な書類。内容品の詳細、数量、価格などを記載するもので、通常3~5部程度用意する必要がある
- その他、国・地域や内容品によって求められる書類:品目や仕向地によっては、植物検疫証明書や原産地証明書など、追加で書類を用意する必要がある
EMS利用時の注意点
EMSの利用に際しては、次のような注意点が挙げられる。
送付可能な物品の制限
- 重量・サイズ制限:国・地域によって重量・サイズに制限が課せられているため、大型・重量物を取り扱うEC事業者の場合は注意が必要となっている。
- 禁制品・危険物の制限:スプレー缶などの危険性を有する物品や、壊れやすい貴重品、アルコールを含有する製品類など、全世界共通で郵送ができない物品が存在する。また、国・地域別に別途禁制品が設けられていることもあるため、利用・配送前には郵便局のサイトに掲載されている規定を必ず確認する必要がある。
補償額の上限
EMSには損害賠償制度が存在するが、無料で受けられる損害要償額は2万円となっているため、注意が必要となる。損害要償額が2万円を超える場合は、追加料金を支払えば補償額を引き上げられるが、上限は200万円までとなっているため、高額な商品を取り扱う場合は注意が必要となる。追加料金などの詳細は、郵便局のサイトから一覧表が確認できる。
なお、日本郵便ではEMSでは扱えない荷物でもUGX(ゆうグローバルエクスプレス)と呼ばれる別サービスで受け入れ可能な場合がある。EMSでの発送が難しい品目の商品を海外へ送りたい、越境EC販売のカテゴリーを広げたい場合は、UGXとの併用を検討することも有効な選択肢となる。
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